キャラクターコレクション “敷部 翔”
デーモン・ペンデュラム
ゴブリンと呼ばれる小鬼がダガーを片手に襲い掛かる。
俺は何とか身を捻り、その攻撃をかわしながら、ゴブリンの顔面にパンチをお見舞いしてふっ飛ばす。
「腐敗の札!」
懐から出した札を放り投げる。ゴブリンに張り付くと、その名の通り、腐敗したように肉が崩れ、ドロドロと溶け落ちていく。
ホッと一息ついた矢先、フォークのような小さな三叉の槍を手に、インプという小悪魔が頭上から襲ってくる。
しかしその攻撃は当たらない。
横から飛び出してきたデビルハンターの猫娘が、その爪でインプを一薙ぎしたからだ。続いて俺の横で召喚の呪文を唱えていたフードを被った爺いが、術を解き放つ。
空中に黒い魔方陣が浮き上がり、その中から剛毛に包まれた腕が、足が、徐々に姿を現す。
「ミノタウロス召喚!!」
老人の声が響き、筋肉隆々の半牛半人が俺たちの目の前に現れた。
「さぁ、観念したらどうだ!!」
俺はミノタウロスを隔てた先にいる男に降伏勧告を促す。あいつは俺のクラスメートの一人だ。どこぞで召喚術を覚え、魔に心を奪われたあいつは、デビルハンターである俺に勝負を挑んできたのだ。
「勝った気でいるなよ! 俺の最大の召喚術を見せてやる!!」
あいつはそう言うと、ザコデビルを自分を守るように配置すると召喚術を唱え始めた。
「やらせはせん!」
爺いの掛け声とともに、ミノタウロスは手に持った棍棒を振り下ろす。が、ミノタウロスの動きが棍棒を振り下ろそうとしている状態で固まる。
「なにっ? 呪縛影か!?」
あいつの召喚したデビルが放ったものだろう。影から生えた鎖がミノタウロスに絡まり、動きを封じていた。
俺たちが攻撃を逸した刹那、あいつの前方で光が上がる。
その光から一人の人間が姿を現した。その姿を見て俺の両目は驚愕に見開かれる。
「親父!?」
車椅子に座ったその姿は正しく俺の親父、敷部霊のものだった。
「魔に導かれし愚か者よ。この世から去れ!」
親父の一言とともに振るわれた腕から赤い光状が奔り、ミノタウロスを貫き、その後ろにいた爺いまでも貫く。
「どうだ、驚いたか!? だが驚くのはこれからだ!!」
そう言いながらあいつが懐から取り出したのは小瓶に入った緑色の液体。
「こいつが何だか知ってるか? こいつは逆行薬って言ってな。わずかな間だけど、これを飲んだ奴は若返るんだ。もしこれを彼に与えたら?」
あいつが渡した小瓶を親父は躊躇うことなく飲み干した。変化は一瞬だった。辺りが輝いたかと思うと、先程まで車椅子に座っていた親父の姿はなく、俺と似た面持ちの男が立っていた。昔からよく周りの人に「親父とそっくりだ」などと言われていたが、目の前の若返った親父を見て、自分でもそう思う。
そんなことを思っているうちに親父が放った光が猫娘を討ち、蒸発させる。
残ったのは俺だけ。
「これで終わりだ」
親父はいつの間にか手にした刀で俺の首を刎ねた。
*
「『逆行薬』で若返った敷部霊にアイテム『魔刃閃』を装備でダイレクトアタック!」
「くっそ~! この卑怯者!!」
俺は手にしたカードを放り投げ、机に突っ伏した。
「俺は初心者なんだから、少しは手加減しやがれ!」
「はっはっは。真剣勝負に手加減なんてあるわけないじゃないか」
「勝ち負けにこだわりやがって」
「だけど面白かっただろ? トレーディングカードゲーム『デーモン・ペンデュラム』は?」
俺は頷く。ルールも簡単で基本的な説明を受けただけでココまで楽しめるとは思わなかった。
「今回は分かりやすいように『ハンターカード』『デビルカード』『アイテムカード』の3種類しか使わなかったけど、この他に魔術を使える『マジックカード』と能力を増減させる『ステータスカード』があるんだ」
こいつは俺のクラスメートの中でも一番のゲーマーである。流行のゲームには何でも手を出す男で、今はこのカードゲームにハマっているのだ。
「にしてもなんで親父のカードが……」
俺は今の親父を表した車椅子に座っている男のカードと、若い頃の親父を表した少年のカードを手に取り、マジマジと見つめる。
「おい、敷部! 大事に扱えよ! お前の親父さんのカードは世界でも数えるほどしかないレアカードなんだからな!」
「ほほう。てことは、そんな強力で価値の高いカードを初心者、しかも皆からいらないカードを寄せ集めて作ったこのデッキを相手に使ったわけだ」
「ま、まあ。そういう考えもあるわな」
「それしか考えられんだろう~~~~~~~!!!!」
やるせない怒りを、俺はこいつにコブラツイストをかけることで発散した。
今日も俺の周りはギャグで満ちて……もとい、平和で満ちている。
おわり